憧れ?のハワイ航路

 いくら日本語が通じるといっても、やはりそこはアメリカ合衆国だったわけで、どちらかといえば会話より、日本語の貼り紙や看板の方が有り難かった(ときどき綴りが間違っていたが)。
 しかし暑い。でも気持ちのよい暑さである。名古屋のべたべた湿気だらけの夏に比べたら、数段過ごしやすい。プーゲンビリアやハイビスカスが野性化(というかこれが自然か)してあちこちに咲いている。この〜木なんの木♪で有名な合歓の木もたくさん生えていて、とてつもない大きさ。囲みにあのCMもここで撮影されたらしい。
 ビーチのそはの繁華街には水着でうろうろする外人さんがいたりするか、全く違和感がない。スタイルさえよければ挑戦してもいいが…とふと横を向くと70はくだらないおばあさんがビキニで堂々と歩いていて、思わず見とれてしまう。
 リュックやウエストポーチなどで重装備しているのは日本人、それも我々のような旅慣れていないタイプだけで、皆とても軽やかに通りを行く。あのヴィトンの店ですら、ビーサンを履いた、Tシャツ単パン姿のカップルで埋まっているのだ。パリ本店ではぴくついていても、ここは気軽に覗ける雰囲気(でも買わないよ)。
 海は本当に絵はがきのよう。珊瑚礁なので海草かほとんど生えず、磯の香りが全くしない。日本の海水浴場(スキー場もか)のように浜辺に歌謡曲など流したりせず、波の昔だけが一日響く。
 歩行者が多すぎるせいか、自転車はあまり見ない。車は多い!が概ね親切である。クラクションはほとんど鳴らさないらしい。朝夕のラッシュは高速(無料・片側6車線ずつはある)を中心にものすごいことになっている。高校生からマイカーを持つのが当たり前になっているらしい。
 時差は19時間。あまりにありすぎて、逆に楽である。飛行機の中でしっかり眠りさえすれば、それほど大変ではない(しかし行きも帰りも前の方の席で赤ちゃんがずっと泣いていた。周りはあまり眠れなかっただろう)。
 中国の珪林の風景といっては言い過ぎだろうが、オアフ島の山は突然高くなっている。平地に湯呑みをふせたようだ。上の方は雲がかかっている。
 天気は良好。時々雨が降るらしいが、割合すぐに止むという。滞在中オアフ島では一度も降られなかった。ただし空気が綺麗なため、夕焼けがあまり赤くない。日本で見る真っ赤な夕日はこちらでは見られない。
 ハワイアン航空(ライバル?にアロハ航空というのもある。JALとANAですね)でオアフ島からハワイ島へ。中学生の時「地球大紀行」で見たキラウェア火山に、ずっと憧れていたのだ。
 火山島のせいか、空気に少し湿気を感じる。島の名物植物もシダだそう。なだらかな山がふたつ見えた。あれがキラウェア火山か〜と感心していたらよくある誤解らしい。マウナケアとマウナロア。どちらも富士山より高く、雲に隠れずふたつ見えるのは1年に十日あるかないかだという。天気も運も良かったということで気を良くする。
 キラウェアは、山項までまっすぐ一本道を行けるほど低い山だとのこと。歩いて逃げられる程度の溶岩流の速度で、世界一安全な火山、らしい。
 といっても今は流れ出ている部分はなく、なごりがあちらこちらにある。見渡す限り一面のアスファルトがボコボコに盛り上がりつつ、かさぶたのようにひぴ割れているのを想像するとよい。
 よせばいいのに同行者は溶岩のカケラを拾って鞄に入れている。即座にエルキンス「楽園の骨」を思い出して止めたがききもしない。火の女神ペレの怒りをかわねばいいが…。行ったことはないが、地獄めぐり(地獄谷温泉?)もこんな雰囲気かも。ところどころ地面から亜硫酸ガスが立ちのぼっていて、とてもハワイと呼べる風景ではない。これが日本なら、屋台が立ち並び「キラウェアまんじゅう」とか「溶岩焼き」などというものか売っていそうだが、建物ひとつあたりにはない。確かに長居は危険そうだ。そういうものの立ち入りは規制されてでもいるのかもしれない。
 土産といえば、このハワイ島特産の、コナ(地名)コーヒーは美味しかった。あとはどこでも売っているマカダミアナッツとチョコ。ただしオアフ島に比べると、土産物でも物価は格段に安いらしい。とはいえオプショナルツアーなのでハワイ島に行くだけでも余計にお金はかかるのだが。
 それにしても、さすが日本人による日本人のための観光地。のんぴりしろっ!という空気か満ち満ちている。滞在型リゾートをしてみたい方、英語か嫌いな方にはかなりお薦めである。