HERO


 ずいぶん前、ある雑誌で少女マンガの特集ページを見つけた。ベストテンがほとんど読んだことのあるものだったので(だからベストテンなのだろうが)嬉しくてメモしてしまった。
 1位・ホットロード、2位・がラスの仮面、3位・ときめきトゥナイト、4位・キャンディキャンディ、5位・生徒諸君!6位・ベルサイユのばら、7位・はいからさんが通る、8位・日出処の天子、9位・有閑倶楽部、10位・BANANA FISH。いずれも名作ぞろいである。
 しかし、どれもこれも10〜20年以上昔の作品なのには少し驚く。歌謡曲のようなもので、昔作られた方が長く生き残るということだろうか。
 さて、特集の一部に「好きなヒーロー・ベスト5」というコーナーもあった。これは下からあげていこう。5位・宗方仁、4位・アッシュ、3位・沖田君、2位・テリィ、となっていて、堂々の第1位は真壁俊(まかべしゅん)なのであった。
 私と同じ年代なら、彼に憧れた人は必ずいる。中学で「真壁」という男子が、体育大会の朝礼で注目を集めていた。大書されたゼッケンのせいで。
 因みに「真壁俊」とは「ときめきトゥナイト」というマンガのヒロイン、江藤蘭世の片思いの相手であり、後の結婚相手でもある。性格がまたオンナノコ好み。徹底した硬派で無口、冷たく見えるけれど心の底では彼女想い。浮気などは絶対しない。というか女性全般に無愛想。何たって「今んとこ女に興味ねーな」ですから。
 15歳のセリフじゃないってば。でもケンカは強い(タッちゃんですね。ボクシングというところも同じだし)。
 結局、女の好みってルーツがあるのかもしれない。「イタズラなKiss」のヒーロー入江君もそういえば似たタイプだった(連載途中で作者が急逝しなければ、あのマンガも何年か後にはランクインしていた気がする)。「千花ちゃんちはふつう」で、くらもちふさこさんも「冷たいけれど実は優しい、という男の子を、よくあるパターン以外で描きたかった」というようなことを書いていたではないか。
 それ以前に、ベスト5のヒーローを見てほしい。5人が5人とも、パッと見が「冷たそう、でも実は…」という感じ。考えてみれば、うち3人亡くなってるし、ひとり破局だし、幸せに家庭を築いているのは真壁俊、君だけだ。
 とは言え、冷たくなければやっていけない、という事情も彼らなりにはあった。そう簡単にヒロインになびいてしまっては、読者少女が感情移入できなくなる。何より連載が終わってしまう。
 確かに真壁俊の「ときめきトゥナイト」よりもアンハッピーの4作品の方が、だんぜん感動的なラストではあった。
 いい男は、現実に向かない。